バレエへのお誘い

一期一会
茶道の言葉ですが 素敵な意味を含んでいる、奥深い言葉だと思います。
一生に会うのは一度だけと言う意味なのでしょうが、単純に一生に一回だけ会うと言うことではなさそうです。
今のこの瞬間の出会とは、此の条件、此の情況の中では、今しかないと言うこと……。
これから何回会うか解らない、たびたび会うかも知れないとしても、その時の「今」は「今」の時とは違っている……周囲の状況も、たたずまいも、自分も相手も今のままではない、違っているに決まっている。
「今」の、此の時は、「今」しかない……「今」は、たった一度の 二度とない「今」
大切な「今」なのだと言うこと。
若さが、此の元気さが、そして その綺麗な美しい肉体が、踊りと出会う。
無垢な 純粋な 柔軟な心が 踊りと出会う。
そんな出会いを大事にしたいと思います。
年取ってからでも 踊りと出会うことはあるでしょう……そう……それはそれなりの貴重な体験なのですが……踊りとは若いうちに出会う方が より多くの可能性を秘めてと言う意味で貴重なことです……
バレエとは もともとは単純にバレリーナになるためのものではありません。
もともと踊りとは、人が生きてゆくための 大きな喜怒愛楽の心の錬成場です。
人類が誕生して何万年が経っているか知りませんがその間に自然に発生し徐々に進化して行った踊り。
人は何の為に踊るのか……
人は何故踊が必要なのか……人は踊ることで幸せな気持ちになれるのだと思います。
単にステージの上だけではなく、稽古場でも、歩いている道でも、唯、肉体を動かしてみるだけで……楽しく、幸せな気持ちになれるものです。
心のままに……気侭に……振舞ってみる……
そう、だから、ある時にはルールに沿って……音楽に合わせて……ステップを規制して……嬉しい、気持ちのままに……楽しく、うきうきとした、気持ちのままに……動くことが幸せな気分になる。
人が踊りを発明したのは、自然に身体を動かすことが面白かったのだと思います。
その、面白かった中で バレエとは、色々な考え方が生まれ、規則を作っていったのだと思います。
人間の体はこうなっているんだよ、この方が合理的に動くんだよ……こんな風に考えたほうが楽しいし、怪我もしない、そして今は違うなと思っていたとしても、何時かはこんな考え方をするようになるんだよ……と、バレエとはそんな歴史をもっています。
そんな 普通の人の営みを辿って見ると言うこと……バレエを遣るとはそんなことなんです。
バレエは今も動いています。今に、現代に柔軟に素直に反応していきます。
これからも動くに違いありません……
でも、今まで習得したものは確実に記憶しています。その知恵を後から来る人に伝えようと努力もしています。
でも、踊りはあくまでも踊りです。
人は踊りと出会うことで幸のときを持つことが出来ます。
幼いときは、幼いままに、
歳をとったときは、その年齢のままに……
その時その時に出会うことで……バレエは微笑んでくれます。まさに、一期一会です。
その時その時機に出会うことの幸せ、生き甲斐……
バレエとはバレリーナになるためのものではなく あくまでも、その時の自分のためにあるのです……生きていることの幸せのために、自分の生きているための証しの為に……
オリンピックの金メタリストはメダルの為に励みます、でも金メダルと言う 限りない栄光賞賛も、その時で終わります。 偶に、恵まれている人がせいぜい三回連続……なんて偉業を打ち立てます。が、それは例外です。珍しい例です……
金メダリストはその時で終わりです。
励んだことはその時で終わりなのでしょうか……その後の長い人生を金メタリストはどうやって生きるのでしょうか……
バレエは バレリーナになるためにではなく……勿論恵まれた人がバレリーナになることはそれはそれなりで幸せなのでしょうが……普通の人は バレリーナになる、そのためにではなく……踊りと触れ合うことの中に生きていることの幸せを見つけるのです……バレエと接するのはそういうものと触れ合うことです。
金メタリストはみんな言います、私は今、泳ぎの中に居ること、走ることの中にいること……飛ぶことの中に居ること……それが楽しい、幸せなことだと。
そんな踊りの楽しさの中に居ること、それが普通の人にとっての踊りです。
バレリーナになることではなく、踊と触れ合う、踊りを見つける、踊りと一緒に居ることが素敵なのだと言うこと。
その素敵さを見つける事がバレエを遣ることなのかも知れません。
子供たちの踊るときの生き生きとした目を見てください。
子供たちの跳んでいる時の弾む心を感じて下さい。
そして幾つになっても役になりきろうとする踊り手たちの陶酔の胸のうちを見てください……
こんな幸せの生き様を知らないままこの世と分かれてしまうことの味気なさ……
花伝書の中にこんな言葉があります「時分の花」芸にはそれぞれの歳にそれぞれの花があるのだと……
世阿弥は芸の実りを花といいます。
踊る人、それを見る人……
バレエとは人に見せる為の踊りなのです……踊り手が居て観客がいるそこに生まれるのがバレエです。
「踊って 見せる」そこにバレエが生まれてくるのです。
幼い子に人前で振舞うことを教えて下さい。
そしてそれを見る自分も、一生懸命に応援した自分も その中から沢山の楽しさを、面白さを、幸せを探して下さい……
踊りとはその時その場所で終ります、儚く、消えてなくなります。
だから美しいのです……かけがいがないのです……
ビデオなんていうものがありますが写るのはほんの残骸です。
お母さんの心はビデオには移りません。踊った子供たちのドキドキした心はビデオには残りません。
美しいものを美しいと感じる心、正しいものを正しいとする、敬虔な、真摯な心がなければ踊りは上手くなりません……必ず脱落して行きます……
そんな心を子供たちに育んで下さい……
さあ今からすぐにバレエの門を叩いてください……
子供と連れ立って……そして貴女一人でも……